微庵の論語メモ

現代語訳は可能な限り原文に忠実に、かつ分かり易くを心がけております。

本当に分かってくれる弟子だけに語ったこと

言葉は一人歩きする。
そして思いも寄らない誤解を生む。

孔子が生きていた時代でさえ、
孔子の言葉を曲解していた者がいたのだろう。
 
 
子曰わく、予(われ)言うこと無からんと欲す。子貢曰わく、子如(も)言わずんば、則(すなわ)ち小子(しょうし)何をか述べん。子曰わく、天何をか言うや、四時(しじ)行われ百物(ひゃくぶつ)生ず。天何をか言うや。(陽貨第十七・仮名論語272頁)
孔子先生が「もう何も言うまい。」と言い出されました。
弟子の子貢が言いました。
「先生が何も言わなければ、私たち弟子はどうやって後世に伝えてゆけば良いのでしょうか?」
孔子先生が言われました。
「天は何を言うだろうか?何も言わなくても、四季はめぐるし、万物は成長する。天は何を言うのだろうか?」
 
 
そのため孔子はおそらく、
自分の真意を正確に理解してくれる弟子だけに
その真意を口述したと思われる。

その弟子が顔回だった。
顔回が夭折すると曽子が現れた。
(関連記事孔子の後継者

このため顔回や曽子以外の弟子たちからすれば、
孔子が何か隠し事をしているように思えたのだった。
 

陳亢、伯魚に問うて曰わく、子も亦(また)異聞有りや。(後略)(季氏第十六・仮名論語257頁)
弟子の陳亢が伯魚(孔子の長男)に尋ねました。
「あなたもまた、私たちとは別に何か違ったことを教えられたのではありませんか?」


子曰わく、二三子(にさんし)、我を以(もっ)て隠せりと為すか。我は隠す無きのみ。我行うとして二三子と与(とも)にせざる者無し。是(こ)れ丘(きゅう)なり。(述而第七・仮名論語89頁)
孔子先生が言われました。
「諸君は私が何か隠しているとでも思っているのか。私は隠したりしない。どんなことでも諸君と共にしないことはない。これが丘(孔子の名)なのだ」