微庵の論語メモ

現代語訳は可能な限り原文に忠実に、かつ分かり易くを心がけております。

仲の良い兄弟

「三本の矢」の寓話は、
毛利元就が3人の息子に送った「三子教訓状」に由来する。
毛利博物館のウェブサイトに原文の写真がある。
その一節を現代語訳すると、
次のようになるだろうか。
 

「隆元は元春や隆景と考えが合わなくとも、
長男なのだから我慢せねばならぬ。
元春と隆景は隆元と考えが合わなくとも、
長男に従うのがものの道理である」
 
 
兄弟の「」・「」とは
このことを言うのだろう。
 
 
所謂(いわゆる)国を治むるには、必ず先ず其(そ)の家を齊(ととの)うとは、其の家教う可(べ)からずして、能(よ)く人を教うる者は之れ無し。(中略)孝は君に事(つか)うる所以(ゆえん)なり。(てい)は長に事うる所以なり。は衆を使う所以なり。(仮名大学18頁)
「国を治めるには、必ずまずは自分の家を整えよ」というわけは、自分の家の家人に教えることが出来なくて、赤の他人に教えることはとうてい出来ないからである。(中略)親への孝は、君主に仕える本となる。兄・姉に穏やかに謙遜することは、上司や先輩に仕える本となる。子どもや弟・妹を慈しむことは、部下や後輩を使う本になる。」
 
 
(ある)ひと孔子に言いて曰わく、子奚(なん)ぞ政(まつりごと)を為さざる。子曰わく、書に言う、孝なるかな惟(こ)れ孝、兄弟に友に、有政に施すと。是(こ)れ亦(また)政を為すなり。奚ぞ其(そ)れ政を為すことを為さん。(為政第二・仮名論語20頁)
ある人が孔子先生に言いました。
「先生はどうして直接政治に携わらないのですか?」
先生が答えられました。
書経に『親には孝を行い、兄弟とは仲良く。これは政治をすることと同じである』とあるように、家庭を円満にすることも政治なのである。どうして直接政治に携わる必要があるのだろうか」
 
 
有子曰わく、其(そ)の人と為りや、孝にして上を犯すを好む者は鮮(すく)なし。上を犯すを好まずして乱を作(な)すを好む者は未だ之れ有らざるなり。君子は本を務む、本立ちて道生ず。孝なる者は、其れ仁を為すの本か。(学而第一・仮名論語1頁)
弟子の有先生が言われました。
「その人柄が孝弟であれば、目上に逆らう者は少ない。目上に好んで逆らわない者で世の中を乱すことを好む者はいない。君子は本を大事にするのである。本が立てば自ら進むべき道が開けてくるのである。孝弟は仁を成し遂げる本であろうか」