微庵の論語メモ

現代語訳は可能な限り原文に忠実に、かつ分かり易くを心がけております。

ぶれない軸

近頃、「ぶれる」とか「ぶれない」とかいう言葉を良く耳にする機会が多いかと思います。

消費税増税問題では、
野田総理は、増税でぶれない」とか。
 
大飯原発再稼働の問題では、
「橋下市長はぶれた」とか。
 

「ぶれる」、「ぶれない」ということに関して、こんな文章を思い出しました。
 

『 「論語」の教えは、見方によっては当たり前のことばかりです。(中略)しかし、(その当たり前のことが)普通にできてしまうようであれば、後世に孔子の教えを残す必要はなかったはずです。
 (中略)「論語の教え」が2500年もの間受け継がれてきたのは、人間の本質がその時と変わらないことを意味します。見方を変えれば、人間にとって大事なこともまた変わっていないのです。
 その変わらない原理を知っておくことで、人生を軌道修正することができますが、しかるべき軸がなかったら、その時の状況に振り回されたままです。「論語」を学ぶ意義はそこにもあるのではないでしょうか。』(安岡定子先生が月刊誌「致知」に連載している「子供に語り継ぎたい『論語』の言葉」、その5月号より一部抜粋・要約)
 

この文章中の「しかるべき軸」とは、「ぶれない軸」と考えてよいかと思います。
「ぶれない軸」を持てば、「その時の状況に振り回され」ずに済むのです。
しかし、「ぶれない軸」であれば、何でも良いというわけではないと思います。
やはり、
「2500年前から受け継がれてきた人間にとって大事なこと」
=「人間の本質」
=「論語の教え」
を軸にすべきでしょう。
論語を読むことは、ぶれない軸を持つことになるのです。
 

子曰わく、三軍も師(すい)を奪うべきなり。匹夫(ひっぷ)も志を奪うべからざるなり。(子罕第九・仮名論語123頁)
孔子先生が言われました。
「どんな大軍でも総大将が捕虜になってしまうことはある。しかし、人の大志や強い目標というものは、どんな平凡な人からさえも、奪い取ることはできないのだよ。」
 
 
ぶれない軸は、奪い取ることはできないのです。
 
 

今回は最後に、上で掲載した致知5月号「子供に語り継ぎたい『論語』の言葉」で安岡先生が紹介していた論語の章句を挙げておきたいと思います。
 

子曰わく、巧言令色(こうげんれいしょく)、鮮(すく)なし仁。(学而第一・仮名論語2頁)
孔子先生が言われました。
「口先がうまく、見せかけの良い表情を作る。こんなことをする人には、仁の心は少ないよ。」
 

子曰わく、剛毅木訥(ごうきぼくとつ)、仁に近し。(子路第十三・仮名論語198頁)
孔子先生が言われました。
「剛毅(心が強く物事に屈しない)木訥(飾り気がなく口数が少ない)な人は、仁に近いよ。」
 

短くて、リズムが良く、暗記しやすい。意味も分かり易い。
子どもたちに一番人気の章句だそうです。