微庵の論語メモ

現代語訳は可能な限り原文に忠実に、かつ分かり易くを心がけております。

適も無く莫も無し(論語、里仁第四⑩)

適の右側は啻の変形。
啻には真っ直ぐという意味がある。

適も無しは、
真っ直ぐを無くすということになる。

無くすべき真っ直ぐは絞直(苦しいほどの真っ直ぐさ)だろう。

適も無しとは
絞直を戒めたものと解釈するべきである。


子曰わく、君子の天下に於けるや、適も無く、莫も無し。義に之れ与に比う。(里仁第四・仮名論語41頁)
孔子先生が言われました。
「君子が天下のことに対するには、それだけとすることも無く、それではならぬとすることも無い。ただ義にしたがってゆくだけだ」


子曰わく、恭にして礼無ければ則ち労す。慎にして礼無ければ則ち葸す。勇にして礼無ければ則ち乱す。直にして礼無ければ則ち絞す。君子、親に篤ければ、則ち民仁に興る。故旧遺れざれば、則ち民偸からず。(泰伯第八・仮名論語98頁)
孔子先生が言われました。
「丁寧でも礼が無ければ徒労。慎重でも礼が無ければいじける。勇ましくても礼が無ければ乱暴。真っ直ぐでも礼が無ければ苦しい。君子(上に立つ者)が近親に厚く情をかければ、民に仁の心が興ってくる。古なじみを忘れなければ、民も薄情でなくなる」 


子曰わく、由や、女六言六蔽を聞けるか。対えて曰わく、未だし。居れ、吾女に語げん。仁を好みて学を好まざれば、其の蔽や愚。知を好みて学を好まざれば、其の蔽や蕩。信を好みて学を好まざれば、其の蔽や賊。直を好みて学を好まざれば、其の蔽や絞。勇を好みて学を好まざれば、其の蔽や乱。剛を好みて学を好まざれば、其の蔽や狂。(陽貨第十七・仮名論語267頁)
孔子先生が言われました。
「由(子路)や、六言六蔽を聞いたことはあるか?」
子路が「まだです」と答えると、先生は子路を座らせ、言われました。
「仁を好むのはいいが、学を好まないでいると、その弊害として(情に流されて)愚かになる。知を好むのはいいが、学を好まないでいると、その弊害として(高遠になって)とりとめがなくなる。信を好むのはいいが、学を好まないでいると、その弊害として(盲信に陥って)人に害を与える。直を好むのはいいが、学を好まないでいると、その弊害として心が絞められて窮屈になる。勇を好むのはいいが、学を好まないでいると、その弊害として乱暴になる。剛を好むのはいいが、学を好まないでいると、その弊害として狂暴になる」