微庵の論語メモ

現代語訳は可能な限り原文に忠実に、かつ分かり易くを心がけております。

利益を社会のために

今週の日経夕刊「人間発見」は渋沢栄一先生の子孫であられる渋沢健さんでした。
以下、記事を抜粋します。
『高祖父の渋沢栄一を意識したのは40歳のとき。今は栄一の研究家として著作も多い。
 2001年に米国のヘッジファンドを辞めて独立しようとしたときです。500以上の会社設立に関与した栄一はどんなことを考えていたのだろうと、栄一の残した渋沢家の家訓を読んでみようと思い立ちました。家訓の存在は父から聞いて知っていました。かつては年初の同族会議で、メンバーの年長者がその家訓を読み上げるしきたりがあったそうです。
 読んでみると第2則「修身斉家ノ要旨」には「投機ノ業又ハ道徳上賤(いやし)ムヘキ務ニ従事スヘカラス」とある。外資系の金融機関を渡り歩き、マスコミに「投機筋」などと書かれるヘッジファンドに勤めた私にとって、これは不都合な事実です。ご先祖は私のことを嘆いているだろうか。栄一はなぜこんな家訓を残したのだろう。栄一のことをもっと知りたいと研究するようになりました。
(中略)
 栄一の言葉には今の時代に通じるものが多く、読むほどにもっと多くの人に知ってほしいと思うようになりました。04年から「渋沢栄一の『論語と算盤(そろばん)』を今、考える」というブログを始め、その後、本にもまとめました。
  3年前からは「論語と算盤」を教材に経営塾を始めた。
 「論語」をよりどころに倫理と利益の両立を説いた栄一の「道徳経済合一説」は、経済のサステナビリティー(持続性)の必要性を表した思想です。まさに今の時代に求められている発想です。
(中略)
  01年9月に米国で同時テロ事件が起きたときです。私がいたムーア・キャピタル・マネジメントの創業者であるルイス・ベーコン氏は、テロの直後に基金を設立し、犠牲になった消防隊員の遺族の支援に乗り出しました。米国では資本市場で利益を上げた金融関係者が、富の一部を社会に還元するというサイクルがあるのです。
 それを見て考えたのが「シードキャップ」(社会起業家育成支援プログラム)という仕組みです。ヘッジファンドを国内機関投資家に紹介する仕事をしていたとき、ファンドの経営者に呼びかけ、ファンドが手にする成功報酬の1割を日本の社会起業家のために提供してもらうようにしました。
 ヘッジファンドの仕事は07年に中断したので、「シードキャップ」はコモンズ投信で引き継ぎました。応援したい社会起業家を毎年選び、コモンズ投信が得る信託報酬の1%を寄付しています。寄付というのは将来世代のために資金を社会に循環させる超長期投資であり、そういう意味で、これもコモンズ投信の本業の一環だと考えています。
  栄一の唱えた合本主義の考えが背景にある。
 一人ひとりの志は小さくても、それが集まれば大きな流れとなって国を変える原動力になる――。それが広く資本を集める東京株式取引所(現東京証券取引所)などをつくった栄一の「合本主義」の根源となる考えです。
 「論語と算盤」の経営塾は、ここで学んだ人たちからどんな派生的な動きが出てくるかを楽しみにしています。コモンズ投信はまだ小さな存在ですが、小さいお金が集まればやがては投資家と企業経営者の間に新しい関係を生むかもしれません。栄一が唱えたように「一滴のしずくが集まればやがては大河になる」と信じています。』
 

渋沢健さんは、さすが渋沢栄一先生の子孫です。
論語と経済を見事に融合させていると思います。
特に私は、渋沢健さん論語のこの章句を実践されている、と感じました。
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子罕(まれ)に利を言う、命とともにし、仁とともにす。
(子罕第九・仮名論語110頁)
孔子先生はまれに利得について言われた。その時は必ず、天命や仁の話を併せてされた。
 
 
渋沢健さんは、利益に仁も併せて実現しようとしています。
応援していきたいと思います。